「勘弁してください」泣いて“自白”してしまう菅家さん 足利再審 (産経新聞)

 【元検事語る(1)】《栃木県足利市で平成2年、当時4歳の女児が殺害された「足利事件」の再審第5回公判は22日、前日の第4回公判に引き続き、宇都宮地裁(佐藤正信裁判長)で午前中も菅家利和さん(63)に対する取り調べの様子を録音したテープを再生後、午後からは菅家さんを取り調べた森川大司元検事の証人尋問に入る予定だ》

 《午前10時に開廷。佐藤裁判長の合図で、テープの再生ボタンが押された。この日再生されるのは、足利事件の公判中だった4年12月8日、森川元検事が、菅家さんを取り調べた際の録音分。法廷に雑音とともに取り調べの様子が流れる》

 《前日の疲れが取れていないのか、弁護人席で音声を聞いている菅家さんの顔には疲労の色が濃く浮かんでいる》

 《これまでの取り調べと同様、2人の雑談から始まる。だが、検事の声は心なしか暗いようだ》

森川検事「東京拘置所とこっち(宇都宮拘置支所)とどっちが過ごしやすい?」

菅家さん「自分としては同じですね。どちらがいいとも言えません。でも、こっちと比べると、人との会話がない…」

森川検事「こっちはどういうところで(会話が)あるの」

菅家さん「こちらの職員の方が話しやすい…」

森川検事「やっぱりあれかな。地元で気分的に通じ合うのかな」

菅家さん「それもあるような…」

森川検事「戻ってきてよかったじゃない」

菅家さん「そうですね」

 《前日(4年12月7日)の取り調べで、別の2つの女児殺害事件だけでなく、(松田)真実ちゃん事件(足利事件)についても否認した菅家さん。談笑を早めに切り上げ、検事の追及が始まる》

森川検事「ところで、前に君からちょっと変なこと聞いたんでね。今日来たんだけれど」

菅家さん「はい」

森川検事「今起訴しているね、真実ちゃんの事件」

菅家さん「はい」

森川検事「あれは君がやったことに間違いないんじゃないのかな」

菅家さん「違います」

森川検事「違う?」

菅家さん「はい。自分にはよく分かんないんですけど、なに鑑定っていいましたっけ」

森川検事「DNA鑑定」

菅家さん「そんなこと聞いたんですけど、自分じゃそれ全然、覚えないんです」

森川検事「だけど、DNA鑑定で君の体液と一致する体液があるんだよ」

菅家さん「全然それ、分かんないですよ。本当に。絶対違うんです」

森川検事「違うんですって言ったってさ。君と同じ体液持ってる人が何人いると思ってんの」

菅家さん「…」

森川検事「それからね、真実ちゃんの下着の中に、体毛がついていたんだよ」

菅家さん「はい?」

森川検事「これも君と一致するんだよ」

菅家さん「違う」

森川検事「君の体液だって現場にあったものと一致しているし、体毛の形だって一致しているし。それから体毛の血液型まで一致しているんだよ」

菅家さん「…」

森川検事「それから、君が真実ちゃんの身体をなめたということでね、唾液(だえき)がついているんだよね」

菅家さん「…」

森川検事「いろんな意味で一致しているんだけどね」

菅家さん「…」

 《DNA型鑑定や体毛の形などを持ち出して、たたみかけるように追及する検事。菅家さんは沈黙する時間が多くなっていく》

森川検事「じゃあ、今まで認めてたのが、なんで最近になって急に否定する気持ちになったの」

菅家さん「…」

森川検事「僕はずるくなれと言ったわけじゃないんだよ」

菅家さん「…」

森川検事「起訴してる真実ちゃん事件については、君が認めたから起訴したわけじゃないんだよ。それだけじゃないんだよ。分かる」

菅家さん「…」

森川検事「君が認めたってことだけじゃなくて、他に証拠があるからだよ」

菅家さん「…」

森川検事「君が真実ちゃんの事件を違うっていうときは僕と目を合わせないでしょう」

菅家さん「…」

森川検事「前に、僕がいろいろ聞いたときは、いろいろ考えたりするときは別として、僕と目を合わせてたじゃないの」

菅家さん「…」

森川検事「違いますなんて否定するときは僕と目を合わせてないね。なぜなの」

菅家さん「…」

 《検事の質問は現場検証に立ち会ったときのことに及んでいく》

森川検事「渡良瀬川の河川敷に連れ出されたっていうのは、検証のときが初めてでしょう。あのバスでみんな一緒に行ったわけ」

菅家さん「はい」

森川検事「君のすぐ前の席に僕が座ってたね」

菅家さん「はい」

森川検事「あのときが初めてだね」

菅家さん「はいそうです」

森川検事「で、検証したときに、真実ちゃんの服を捨てたという場面、君が説明したでしょう」

菅家さん「はい」

森川検事「最初は、付近の様子が変わってて違うところ説明したけれども、後で死体がここにあったと教えてもらってからは、捨てたのはここだと言って説明したでしょう」

菅家さん「はい」

森川検事「君が説明した場所は、誰かから教えてもらったわけじゃないよね」

菅家さん「教わっていません」

森川検事「その場で、死体がここにあったとだけ教えてもらってたよね」

菅家さん「はい」

森川検事「で、君が説明した場所は、すぐ下から真実ちゃんの下着が発見されてるんだよ。あんな詳しい場所まで新聞には出てなかったはずなんだけど」

菅家さん「自分は河川敷から下りて、ずーっと行って坂がありますね。自分がそのへんだと一応、話してみたんです」

森川検事「一応話してみたって、当てずっぽうに話したの」

菅家さん「全然分かんなかったですよ」

森川検事「分かんないのがね、実際の事実と狂いがないわけだ。当てずっぽうで話したわけ」

菅家さん「はい、だいたいあのへんだと思いまして」

 《あくまでも菅家さんの供述はあいまいだ。それでも、検事は事実関係との整合性をつけようと質問を繰り返す》

森川検事「何でそう思ったの」

菅家さん「前は橋の上から見ると、木がいっぱいあったんですけども、そのときは木が枯れていて、分かんなかったんです」

森川検事「枯れてて分かんなかったけれども、死体のある場所を教えてもらってからはピッタリした位置じゃないの。捨てた場所は」

菅家さん「…」

森川検事「しかも、死体をどう隠したか、どういうふうに説明した」

菅家さん「確か、抱いて」

森川検事「抱いて。運んだ後どういうふうにした」

菅家さん「抱いて、それで置いて、草をかぶせたと」

森川検事「自分で実際にやってもいないのに、想像でそんな話ができたの」

菅家さん「…」

森川検事「はっきり言って、草をかぶせたなんていうことはね、前に(福島)万弥ちゃんの事件(昭和54年の女児殺害事件)とか、(長谷部)有美ちゃんの事件(昭和59年の女児殺害事件)を説明したときにもそんな説明はしてなかったね。死体の隠し方っていうのは、これはもう全然違うんだよ。なんで真実ちゃんの事件でね、そんな説明したんだろうか。作り話にしても」

菅家さん「…」

森川検事「どういうふうに隠されてたのか、何かで聞いたことあるの」

菅家さん「いいえ、ありません」

森川検事「新聞か何かに出てたの」

菅家さん「出てません」

森川検事「じゃあ、なんでそんな説明できたの」

菅家さん「…」

森川検事「君の説明はね、実際に隠されてたのと同じ状態なんだよ。誰にも教えてもらわなくてね、なんでそんな実際の状態と同じ説明ができたんだろう」

菅家さん「…」

 《菅家さんのそれまでの供述との矛盾点を突きつけて追及を続ける検事。そして菅家さんに異変が起きる》

森川検事「で、コンクリートの堤防上で首絞めて、運ぶときに斜面で1回下ろしたとか説明したでしょう」

菅家さん「はい」

森川検事「靴が脱げたなんて説明もしたでしょう」

菅家さん「はい」

森川検事「なんでそんな説明したの」

菅家さん「…」

森川検事「どうなんだい。ずるいんじゃないか、君」

菅家さん「…」

森川検事「なんで僕の目を見て言わないの、そういうこと。さっきから君は、僕の目を一度も見てないよ」

菅家さん「ごめんなさい、すいません」

森川検事「うそだったの」

菅家さん「ごめんなさい。勘弁してください。勘弁してくださいよ」

森川検事「いいから」

菅家さん「勘弁してくださいよ」

森川検事「本当のことを聞きたいっていう言葉を何回も言うよ、僕は。うそをつけっていうことじゃないんだよ」

菅家さん「はい」

     =(2)に続く

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